Treatment
糖尿病の治療
当院の糖尿病治療方針
糖尿病を持ちながらもその人らしい生活が送れるように
当院では、日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の資格を有する保健師、看護師、管理栄養士などのコメディカルスタッフが糖尿病の診療にあたっています。糖尿病のある方が、糖尿病を持ちながらもその人らしい生活を送れるよう、チーム一丸となってサポートして参ります。
糖尿病の治療
糖尿病の基本的な治療は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つです。
当院では、管理栄養士による栄養相談や看護外来などチーム体制で糖尿病の診療にあたっています。
食事療法
食事療法は糖尿病の状態や治療内容などにかかわらず、糖尿病の治療の基本です。
食事療法は、血糖値を管理し改善することを目指し、糖尿病の疑いがある段階から始めます。ただ摂取カロリーを制限するだけではなく、必要な栄養素をバランスよく摂取することが重要です。
当院では、管理栄養士や保健師、看護師が患者様個々の病状や合併症の状態、生活環境、食事の好みなどを勘案しながら、患者様ごとに適した栄養指導、アドバイスを提供して参ります。
食事療法をさらに詳しく
食事療法についてさらに詳しく知りたい方は、以下よりご覧ください。
食事療法のすすめかた
食事療法のすすめかたとしては、まず、患者様の体重や体組成、検査値の変化、病態や嗜好を勘案し、患者様ごとに適したエネルギー摂取量や栄養素の配分を決定します。
エネルギー摂取量は、患者様の年齢や肥満度、身体活動量や病態などを考慮して決定します。
治療開始時の目安とするエネルギー摂取量は以下の算出方法で求めます。
エネルギー摂取量=目標体重1)×エネルギー係数2)
1) 目標体重(kg)の目安
| 65歳未満 | [身長(m)] 2×22 |
|---|---|
| 前期高齢者(65~74歳) | [身長(m)] 2×22~25 |
| 後期高齢者(75歳以上) | [身長(m)] 2×22~25 |
2) エネルギー係数の目安
| 軽い労作(大部分が座位の静的活動) | 25~30kcal/kg目標体重 |
|---|---|
| 普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含む) | 30~35kcal/kg目標体重 |
| 重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある) | 35kcal~/kg目標体重 |
例えば、60歳の家事をこなす主婦の方で身長160cm(1.6m)であれば、
目標体重=1.6(m)×1.6(m)×22≒56.3kg
エネルギー摂取量=56.3(kg)×30~35(kcal)≒1,690~1,970kcal
と求められます。これは1日のエネルギー摂取量となりますので、これを3食の食事に分けて摂取することになります。(あくまで目安ですので、患者様ごとに個別に設定していきます。)
そして、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど各栄養素が、必要量摂取できるように配慮していきます。
自宅でもできる食事指導のポイント
患者様ごとに食習慣や問題点はそれぞれ異なります。明らかな問題点があれば、まずはその是正から進めていきましょう。
- 肥満が気になる方はまず腹八分目にしましょう。
- 食品の“種類”はできるだけ多く摂ることが大切です。
- 動物性脂質(飽和脂肪酸)は控えめにしましょう。
- 食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)を摂りましょう。
- 朝食、昼食、夕食を規則正しく摂りましょう。朝食を抜くことや、1日2食などは良くありません。
- ゆっくりよくかんで食べましょう。
- 単純糖質(お菓子、ジュースなど)を多く含む食品の間食は避けましょう。
合併症予防のための食事療法
糖尿病の治療目標は血糖値を適正に保ち合併症を予防することです。食事療法では、以下に注意しましょう。
- アルコールの摂取は禁止ではありませんが適量(1日25g程度まで)にとどめ、肝疾患や合併症など問題のある患者様はアルコールは控えましょう。
- 高中性脂肪血症の場合には、飽和脂肪酸、ショ糖・果糖などの摂り過ぎに注意しましょう。
- 食物繊維を多く摂取するようにしましょう(1日20g以上)。食物繊維には食後の血糖値上昇を抑制し、血清コレステロールの増加を防ぎ、便通を改善する作用があります。
- 高血圧症を合併した患者様は食塩摂取量を1日6g未満にしましょう。
- 糖尿病性腎症などによって腎不全への進展リスクが高いと考えられる患者様の中には、タンパク質を制限する必要がある場合があります。しかし、特に高齢者などに対する過度のタンパク質摂取量の制限は低栄養や筋肉量の減少、認知機能低下などのリスクが上がる可能性もありますので、必ず主治医や管理栄養士に相談しましょう。
当院では、管理栄養士や保健師、看護師が患者様個々の病状や合併症の状態、生活環境、食事の好みなどを勘案しながら、患者様ごとに適した栄養指導、アドバイスを提供して参ります。
運動療法
運動療法は糖尿病治療の基本のひとつです。
運動療法は、食事で取り入れたエネルギーを適正に消費し、過剰供給にならないために行います。また、身体を使うことで筋肉をつけるとインスリンの作用が強化されるので、血糖値のコントロールがしやすくなります。
さらにストレス解消にもなりますから、無理のない範囲で体を動かすことはさまざまな効果を発揮します。
運動療法をさらに詳しく
運動療法についてさらに詳しく知りたい方は、以下よりご覧ください。
運動療法のすすめかた
まずは患者様の基礎体力、年齢、体重、健康状態などを勘案し、個々の患者様における適切な運動の「種類」、「強度」、「時間」、「頻度」を決定します。はじめは歩行時間を増やすなど無理のない程度に身体活動量を増やしていくことから始め、段階的に運動量を増加させていきます。
運動の種類
運動には有酸素運動とレジスタンス運動があります。
有酸素運動
酸素の供給に見合った強度の運動で、継続して行うことによりインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)が増大します。また、心肺機能を高める効果があります。
例)歩行、ジョギング、水泳など
レジスタンス運動
おもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動で、筋肉量を増加し筋力を増強する効果が期待できます。
例)腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなど
有酸素運動とレジスタンス運動はともに血糖コントロールに有効であり、併用によりさらに効果が期待できます。高齢者の方では、バランス運動(片足立位保持、ステップ練習、体幹バランス運動など)も有用です。
運動療法の実際
一般的には中強度の有酸素運動を行うことが推奨されます。
運動持続時間は、糖質と脂肪酸の効率のよい燃焼のために20分以上続けるようにしましょう。
有酸素運動は中強度で週に3回以上、運動をしない日が2日間以上続かないように、レジスタンス運動は週に2~3回、連続しないように行うことが効果的です。
運動療法は継続することがとても重要です。無理なく続けていきましょう。
運動療法のタイミングは食後が望ましいとされていますが、実生活のなかで無理なく続けられる時間であればいつでもかまいません。
ただし、特にインスリン療法やインスリン分泌促進薬で治療中の患者様の場合、低血糖には注意が必要です。
以上のように、運動療法は糖尿病治療においてとても効果的です。ただし、血糖コントロールが非常に悪い場合や、糖尿病合併症が進行している方など、運動療法を禁止あるいは制限した方がよい場合があります。運動療法の適応については必ず主治医と相談しましょう。
薬物療法
糖尿病の治療では、血糖値を調整する薬が多数存在します。たとえば、膵臓からのインスリン分泌を高めるもの、インスリンの働きを強めるもの、食事から得た糖を体内でゆっくり吸収させるものなどが挙げられます。当院では、患者様お一人おひとりの症状や原因を見極めながら、必要と考えられる薬を選択いたします。
薬物療法をさらに詳しく
薬物療法についてさらに詳しく知りたい方は、以下よりご覧ください。
飲み薬と注射薬の違い
糖尿病のお薬には飲み薬と注射薬があり、それぞれ特徴があります。飲み薬は毎日の生活に取り入れやすく、種類も多いのが特徴です。一方、注射薬はより確かな効果が期待できます。費用面では、注射薬は薬代に加えて自己注射の指導料なども必要になるため、一般的に飲み薬より高くなります。どのお薬が合うかは、血糖値の状態や生活習慣、他の病気の有無など、患者様お一人おひとりの状況によって変わりますので、気になる点は診察時にお話しください。
飲み薬について
糖尿病の内服薬は、主に「インスリン抵抗性改善薬」「インスリン分泌促進薬」「糖の吸収と排泄を調節する薬」に分類されます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
インスリン抵抗性改善薬
インスリン抵抗性とは、身体の中にインスリンが十分あるのに、肝臓や筋肉、脂肪などの組織がインスリンの働きに反応しにくくなっている状態です。そのような状況に用いられるのがインスリン抵抗性改善薬です。
これは細胞がインスリンの働きを受け入れやすくする作用を持っています。主な種類には、肝臓での糖の産生を抑えるビグアナイド薬と、筋肉や脂肪細胞のインスリン感度を高めるチアゾリジン薬があります。お薬によっては胃腸の不快感や身体のむくみなどに気をつける必要がありますが、適切に使うことで血糖値の改善が期待できます。
インスリン分泌促進薬
膵臓からのインスリン分泌が足りない方によく処方されるのがインスリン分泌促進薬です。膵臓にはたらきかけてインスリンの分泌を促す薬であり、血糖値との関係で大きく二つのタイプに分かれます。
血糖依存性
食事をすると小腸から分泌されるホルモン(GLP-1やGIP)の分解を防ぎ、血糖値が高いときだけインスリン分泌を促します。同時に、血糖を上げる作用のあるグルカゴンというホルモンの分泌量も抑えるため、バランスの良い血糖コントロールができます。
血糖非依存性
スルホニル尿素(SU)薬:膵臓のβ(ベータ)細胞に直接働きかけ、血糖値に関係なくインスリン分泌を促します。
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬):食後の急な血糖上昇を抑えるために開発された薬で、素早く短時間だけ働きます。主に食事の直前に服用し、食後の高血糖が気になる方に適しています。
これらの薬はどれも、空腹時の低血糖や体重増加に注意を払う必要があります。
糖の吸収と排泄を調節する薬
インスリンとは別の仕組みで血糖値を下げる薬もあります。たとえば食事で取り込んだ糖の消化吸収を遅らせるα-グルコシダーゼ阻害薬は、腸での糖の分解を遅くし、食後の血糖上昇をゆるやかにします。これは急激な血糖上昇を防ぐ点で、特に食後高血糖の方に効果的です。副作用として、おなかの張りやガスが増えることがあります。
また、SGLT2阻害薬は、腎臓で糖を再吸収するのを抑え、余分な糖を尿中に排出します。この薬の特徴は、インスリンの働きとは関係なく効果を発揮することです。副作用として、尿の回数が増えたり、尿路の感染症が起こりやすくなったりすることがあります。
注射薬
糖尿病治療の注射薬には主に2種類あり、多くの場合、患者様自身が自宅で注射します。注射は「最後の手段」というわけではなく、患者様の状態によっては早めに使うことで、合併症予防や生活の質向上に繋がっていきます。
インスリン注射
体内でほとんどインスリンが作られない1型糖尿病では欠かせない治療法です。2型糖尿病でも、急に血糖値が高くなったときや、飲み薬だけでは十分な効果が得られない場合、また腎臓や肝臓の働きが弱っているときなどに使われます。朝・昼・夕の食事前や寝る前など、生活リズムに合わせた注射計画を立て、効果の出る時間や持続時間が異なる種類を組み合わせることで、一日を通して血糖値の変動を穏やかにします。注意点としては低血糖の可能性が挙げられます。
GLP-1受容体作動薬
膵臓のβ(ベータ)細胞に働きかけてインスリン分泌を増やすと同時に、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑え、血糖値のバランスを整えます。また、胃の動きを遅くする働きがあるため、食事の消化が緩やかになり、食後の血糖上昇を和らげる効果も期待できます。使い始めには胃腸の不快感が出ることもあります。多くの場合は時間とともに症状は落ち着きますが、違和感が続く場合は医師に相談しましょう。
糖尿病の病態は人によりさまざまであり、治療薬の選択も多岐にわたります。当院では、患者様ごとに適した治療法をご提案いたします。